2024/07/02 17:51
お久しぶりです。本店店長の山下です。
さて今回はCETTEN3周年を記念して制作した津村耕佑氏との共同オリジナルジャケット、"MerZ"についてお話ししようと思います。

すでに多くのお客様に反響いただいているこちらのジャケット。CETTENの大きなプロジェクトによって生まれたアイテムですが、デニムジャケットとしても非常に着甲斐のある1着です。
というのも、使用しているデニム生地はリジッド(糊付け)状態、いわゆるノンウォッシュですので、これから幾年もの歳月をかけて色落ちしていきます。
「デニムを育てる」なんてフレーズ、聞いたことがある方も多いかと思いますがまさにそんな1着です。
今回なぜこのような生地を使用するに至ったかと言いますと、、、
CETTENスタッフの多くが同じようなリジッドの状態からデニムを育てるほどのデニムオタクであるからです。
ということで今回は「MerZを育てるためのすゝめ」的なものを記していこうと思います。長くなりそうですが、ぜひお付き合いください。

まず前提として、市販の全てにデニム生地はこの糊付けされた状態を経て製品になります。ここから様々な加工を経て、色落ちさせて販売されることがほとんどです。
ですが稀にこのパリパリの状態のまま販売されることもあります。デニムを育てる人の多くはこのパリパリを求めているわけです。
ではなぜデニム生地がこのようなパリパリな状態になるのか。それにも理由があります。
生地を作るにあたり、まず綿(コットン)を糸にしたものをさらに染色します。ただ、糸をこのまま織機にかけると機械の圧力に糸が負けてしまうため、行われるのが「糊付け(サイジング)」です。
ですのでそもそも固くした糸を織ることでデニム生地は出来上がるわけです。
ではここからは育て方について。
デニム生地はこのノンウォッシュの状態から最初の洗い(ファーストウォッシュ)をかけられる時に最も縮みます。昨今の生地には防縮加工が施されておりますがそれでもやはり若干縮みます。
この特性から、最もセオリー通りの育て方は、リジッドデニムからワンウォッシュかけて縮めたうえで着用し始めるという方法です。これにより概ねアタリやハチノス(シワ)の付く位置は変わらず着続けることができます。
では僕はどうやって育てるかというと、、、
リジッドデニムをそのまま着続けます。
ワンウォッシュ後に縮むことも気にせずとりあえず着ます。世間ではやや過激派かもしれません。。。
ただ個人的なこだわりとしては、「あくまでも作業着から生まれたお洋服。気にせず着るのが一番ライフスタイルが表れるだろう」という勝手な思想もあります。
また、生地が固ければ固いほどシワの付き方がより鋭利になるので、理想的なアタリやハチノスを付けられるとも考えています。
ただしこの方法には一つ注意点があり、ノンウォッシュの状態はいわば糸が完全に密になっていないため実は最も生地が弱いわけです。その上固いので擦れると破れる可能性があります。そうなると流石に悲しいので、生地が痛まないかだけは細かくチェックが必要です。
しかし世の中にはさらに過激派な人もいるようで、、、
ワンウォッシュかけて縮めた上で市販の糊を上から塗る「糊付け」までセルフで行う育て方もあるようです。
この方法はウォッシュによるシワの位置ズレを防ぎつつ固い状態で育てることができるため、ある意味いいとこ取りとも言えます。
ただしこの方法の欠点は、生地が固くなりすぎるということです。当店のオーナー荒井が過去に一度試した際はジーンズが自立するほどの固さになりました。そして着用のたび痛みとの闘いでもありました。
育てる熱意のあまり体に傷が付く可能性もありますのでくれぐれも自己責任で、という方法です。
それからお客様によく洗う頻度についてもご質問いただきますが、バキバキに育てたい場合おすすめするウォッシュの頻度は「半年〜1年に一度」です。
生地の衛生面としてもこれくらいがベストかと。ただしあまり着ない時期があった、逆によく汗をかいたなどの理由からあくまでも参考程度に捉えていただければと思います。

ここまで3種類の育て方を紹介してまいりました。
ただ僕は店頭でお客様にあまり無理な育て方はおすすめしません。なぜなら無理をしてる時点でそれはリアルなライフスタイルではないからです。
あくまでもデニム生地の魅力は「ライフスタイルがシワに表れる」ことであるため、結局は着用者それぞれが何も考えず(もしくは考えまくって)着まくった末に自ずと表れる変化が一番かっこいいと思います。
今回、MerZに使用したデニム生地は
岡山県井原市にある「クロキ」の14オンスのセルビッチ生地です。
セルビッチ生地とは旧式のシャトル織機で織られたものです。このシャトル織機はすでに生産終了となっているため、世界中に現存する機械が全て使用できなくなった時点で生産不可能となる希少な生地です。
古いが故に生産効率はかなり悪く、今普及している通常のデニム生地の数倍もの手間と時間を要します。
その分ヴィンテージを思わせる風合いを出せる点と手織りに近い素材感があることから今回使用するに至りました。

お客様の中にもこのMerZで初めてデニムを育てるという方もいらっしゃいました。嬉しい限り。
そのような方には心からおすすめできる1着です。
是非、何年もの時を共にするジャケットを大切に育てていきましょう。
もちろん、MerZ以外でもデニムアイテムを育てたい方はいつでもCETTENスタッフにご相談ください。1から10まで説明いたします。
長くなりましたがお付き合いいただきありがとうございました。
ではまた。