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2025/11/21 19:40
派手さはない。ただ、整っている。
A.P.C.の服に触れると、まずこの静かな印象が残ります。
特別な何かを主張しようとせず、ただ自然体でそこにある。
その落ち着きに、ふと惹かれてしまう瞬間があります。
Jean Touitouという人物がつくる静けさ

A.P.C.の創設者 Jean Touitou は、哲学や音楽に影響を受けてきた人です。
彼の服づくりには、
「服は生活を整えるための道具であるべき」
という考えがあります。
彼はインタビューの中でこう語っています。
「ファッションは落ち込むことがないから好きだ。」
「服は人の主張ではなく、人が自然体でいられるためのものだ。」
服に大きな物語性を持たせず、
着る人の日常にしずかに馴染むものをつくりたい。
この思想こそ A.P.C. の“佇まいの美しさ”を形づくっています。
Production と Création が同じ重さで存在するブランド
A.P.C.という名前は、
Atelier de Production et de Création(生産と創造の工房)
の略です。
デザインだけで成立させるのではなく、
縫製の精度、素材選び、パターンの正確さ――
その全部を、同じ重さで大切にしているブランドです。
「作ること」に対して誠実であろうとする姿勢。
それがA.P.C.の服を見たときに感じる“まっすぐさ”に繋がっているように思います。

A.P.C.の引き算 ― 無駄のない美しさ
A.P.C.の引き算は、ただシンプルにしただけの服とは違います。
必要な要素だけを丁寧に残し、全体を静かに整えること。
その精度がA.P.C.の美しさをつくっています。
派手ではないのに、着ると形がきれいに決まる。
装飾を抑えることで、素材やシルエットがすっと前に出る。
“削る”というより、整えることで完成させる服 という印象です。
CETTENに並ぶA.P.C.のアイテムを見ても、その姿勢はよく伝わってきます。
余計な飾りを排し、素材とラインだけで成立している服 が中心です。
ここからは、その美学が特によく表れている3点をご紹介します。
余白のあるバルマカーンの形に、重みのあるホースレザーを合わせた一着です。
比翼仕立てで視覚的な情報を抑え、革の静かな存在感がそのまま前に出ます。
ただまっすぐ落ちるだけのシルエットなのに、不思議と品が宿る。
A.P.C.らしい“整った佇まい”を感じるコートです。
深いネイビーのカウレザーは、光の角度によって黒にも見える落ち着いた色味です。
余計な装飾を省き、ジップとシルエットだけをすっきり残しています。
日常に自然と馴染むレザーなのに、どこか凛としている。
A.P.C.のレザーの中でも、名作と言いたくなる一着です。
マットなモールスキンの質感が、直線的なラインをきれいに見せてくれる一本です。
細すぎず太すぎず、迷いのないストレートシルエット。
素材と形のバランスだけで成立していて、とてもA.P.C.らしいパンツです。
A.P.C.の服は、声を張って自分を主張するタイプではありません。
けれど、そっと日常に寄り添って、気持ちを整えてくれるような力があります。
何気ない日の装いが、少しだけ整って見える。
そんな魅力を持つブランドだと感じています。
CETTEN 江島
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